十二時法語脚注

2000/09/15更新
Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition)
著作権 Shogakukan 1988.国語大辞典(新装版)著作権 小学館 1988.


じゅうに‐とき【十二時】
  一日の時刻を十二辰で数えていた時の一昼夜。昼の卯・辰・巳・午・未・申と、夜の酉・戌・亥・子・丑・寅とを合わせたもの。また、一日を刻む一二のとき。じゅうにじ。


ほう‐ご【法語】
ほうご(1) (ホフ‥)仏語。
1 道理にのっとって説かれた正しいことば。律語に対していう。
2 禅家で、修行者を正しく指導するために垂れる教示の語、または文章。また広く諸宗でも、説き示したことば、文章をいう。法談。法話。


ぶっ‐そ【仏祖】
ぶっそ1 仏教の開祖。すなわち、釈迦牟尼。
2 仏と、禅宗での一宗一派の祖師。
3 力量・道徳のともに卓越した禅僧。仏の教えを正しく体得した禅僧。


せい‐でん【正伝】
  せいでんまちがいのない、正しい伝記。


ぶっ‐ぽう【仏法】
  ぶっぽう(‥ポフ)
  仏の説いた教え。また、仏が衆生を教え導く教法。⇔世法


る‐てん【流転】
るてん1 仏語。六道四生の迷いの生死を繰り返すこと。生まれかわり死にかわって迷いの世界をまどいあるくこと。輪廻(りんね)。「生々流転」
2 状態・境遇などが、たえず移り変わること。同じ状態にとどまらず変化していくこと。
3 次々と受け継がれ伝わること。流れ伝わること。


がん‐かい【願海】
がんかい(グヮン‥)
仏や菩薩の誓願の深く広いことを海にたとえた語。


とら【寅】
とら1 十二支の一つで、その第三番目。いん。
2 1を年月日・方角・時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や月や日。寅年・寅の日など。A東から北へ三〇度寄った方角。東北東。B現在の午前四時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。寅の刻。寅の時。C正月の異称。


う【卯】
う1 干支(えと)の名称の一つ。十二支の一つで、その第四番目。うさぎ。ぼう。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A東の方角。B今の午前六時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。(2)二月の異称。


てん【点】
てん 9 一昼夜を一二等分した刻をさらに分けたもの。特に、不定時法で日没から夜明けまでをさらに五等分したものの一つをいう。


しょう‐じ【生死】
しょうじ(シャウ‥)
(「しょうし」とも)
1 (梵sa。sDraの訳語。輪廻(りんね)とも訳する)仏語。生まれ変わり死に変わりして輪廻すること。
2 生きることと死ぬこと。また、生かすことと殺すこと。いきしに。せいし。
3 生まれてから死ぬまでのあいだ。一生。生涯。また、生命。*幸若・満仲「たた生死は春の夜の夢のことし」
4 (「生」より「死」に重きをおいて)死ぬこと。死。*無名抄「此哥の入りて侍るが、生死の余執ともなるばかり嬉しく侍るなり」
−即(そく)涅槃(ねはん) 仏語。無差別平等の道理を知る真実智からみれば、生死の差別相を離れて涅槃なく、涅槃の平等心を離れて生死はありえないということ。また、迷いとして捨てるべきものも、悟りとして証すべきものもないという意で、諸法実相を明らかにするもの。
−の=海(うみ)[=苦海(くがい)・大海(たいかい)] 仏語。生死流転(るてん)の迷いの境界を海にたとえていう語。生死海。
−の境(さかい) 生きるか死ぬかのさかい目。また、死線をさまようこと。命の瀬戸際。
−の到来(とうらい) 死ぬべきときが来ること。
−の眠(ねむ)り 生死流転(るてん)の境界をそれと気づかない迷い。
−の闇(やみ) 仏語。煩悩のために生死流転(るてん)を繰り返す迷いの境界を闇にたとえていう語。
−を=離(はな)る[=出(い)ず] 仏語。煩悩の迷いの境界を捨て、涅槃の悟りに達し、生死流転(るてん)を繰り返す苦界から脱する。悟りを開く。

しょうじ‐いちだいじ【生死一大事】 =しょうじじだい(生死事大)
しょうじ‐じだい【生死事大】 仏語。生き死にを繰り返す六道輪廻の迷いを捨てて悟りをひらくことは、いま人と生まれているこの時をおいて他になく、最もだいじなことであるということ。人の世の無常ではかなく移ろいやすいことをいう。
━‐じょうや(‥ヂャウヤ)【生死長夜】 仏語。生き死にを繰り返す迷いのつきないことを、長い夜の夢にたとえていう語。
━‐どうしん【生死同心】 奈良・平安時代に、借金の証文に使った語で、連帯の債務関係を表した語。

━‐むじょう(‥ムジャウ)【生死無常】 仏語。人の生死の無常であること。人生のはかないこと。
━‐るてん【生死硫転】 仏語。生死を重ねて、たえることなく、三界六道の迷界をはてもなくめぐること。


よう‐じん【用心・要(エウ)心・要(エウ)慎】
ようじん1 心を用いること。心づかいをすること。用意。「万一のための用心」
2 特に、仏道を修行する者がする心がけ。心くばり。
3 万一に備えて注意を払うこと。あらかじめ警戒して怠らないこと。警戒。「火の用心」「転ばないように用心しながら歩く」


ごう【業】
ごう(ゴフ)
(梵karmanの訳語)
1 仏語。意志による身心の活動、行為。一般に身・口・意の三業に分ける。また、身・口の二業に、他に示すことのできる表業と他に示すことのできない無表業の二つを分ける。善心による善業、悪心による悪業、善悪いずれでもない無記業の三業に分けることもある。
2 前世の善悪の行為によって、現世においてうける応報。*宇津保‐藤原の君「ごうにやあらざりけむ。御病おこたりぬ」


ねん【念】
ねん1 かんがえ。思慮。また、心にかかること。懸念。
2 心くばり。注意。また、確認。
3 かねての望み。一念。また、執念。妄念。
4 (「廿(二十)」の合音ネムが「念」の音に通じるところから)年月日などの二〇の意に用いる。二一日を念一日と表す類。
5 仏語。きわめて短い時間をいう。刹那。一念。念念。
6 仏語。かつて経験したことを記憶して忘れないこと。また、単に思いの意にも用いる。
7 仏語。観念・思念などの意で、対象に向かって想いを集中し、心を動揺させないこと。
−が入(い)る 注意が行き届いている。ていねいである。手数がかかっている。
−が届(とど)く 思いが通じる。願いがかなう。
−が残(のこ)る 心残りがする。この世に思いが残る。
−が晴(は)れる 思いが晴れる。心がかりがなくなる。
−に掛(か)ける 心にかける。注意する。気をつける。
−には念を入(い)れる 注意したうえにも注意する。重ねて確認する。
−の過ぐるは無念(むねん) 念を入れすぎると、かえってまのぬけたところができる。程度が過ぎるとかえって足りないのと同様によくない。
−の為(ため) 一層注意をうながすため。確認のため。
−もない  1 考えがない。思慮がない。念なし。 2 ものたりない。面白くない。 3 無念である。残念である。口惜しい。念なし。 4 思いもよらない。とんでもない。 5 容易である。案外だ。
−を入(い)れる 十分注意する。心をこめてていねいにする。手数をかける。
−を=押(お)す[=つかう・突(つ)く] 相手に十分に確かめる。重ねて確認する。


あきら・める【明らめる】
あきらめる〔他マ下一〕卆あきら・む〔他マ下二〕
1 明らかにする。はっきり見定める。事情などを明白に知る。*徒然草‐一三五「ここもとのあさき事は、何事成りともあきらめ申さん」
2 (心を)明るくする。晴れやかにする。さわやかにする。*万葉‐四〇九四「御心を安吉良米(アキラメ)給ひ」


こころ【心・情・意】
(4) 事物について、人間の「心」に相当するものを比喩的にいう。
1 人に美的感興などを起こさせるもの。事物の持つ情趣。風情。おもむき。*源氏‐絵合「四方(よも)の海の深き心を見しに」
2 あまりおおやけにされていない事情。また、詳しいいきさつ。内情。実情。*源氏‐若紫「門うちたたかせ給へば、心知らぬ者の開けたるに」
3 物事の本質的なあり方。中心的なすじみち。物事の道理。*古今‐仮名序「古へのことをも、歌のこころをも知れる人」
4 内々でたくまれた、物事の趣向。くふう。*源氏‐若菜上「紫の綾のおほひどもうるはしく見えわたりて、内の心はあらはならず」
5 ことばの意味。わけ。語義。また、詩歌文章などの含んでいる意味内容。*古今‐仮名序「言の心わきがたかりけらし」
6 事柄を成り立たせている根拠。物事の理由。また、謎ときなどの根拠。わけ。*海道記「山に霊社あり、江尻の大明神と申す。〈略〉法師は詣らずと聞けば、其の心を尋ぬるに」
7 歌論・連歌論用語。@和歌や連歌の主題。表現の意図。意味内容。*古今‐仮名序「この歌、いかにいへるにかあらん、その心、えがたし」A和歌や連歌の情趣、感動、余情などをいう。*新撰髄脳「凡そ歌は〈略〉こころにをかしき所あるをすぐれたりとうふべし」B和歌や連歌の表現の上に見られる、すぐれた感覚。美的なセンス。*永承五年女御延子歌絵合「末いまめかしく、こころありなど侍るは、ゆかぬことにぞ」


さと・る【悟る・覚る】
さとる〔他ラ五(四)〕(「さとす(諭)」に対する自動詞。「さとい(聡)」と同源か)
1 物事の道理をつまびらかに知る。あきらかに理解する。「運命をさとる」*西大寺本金光明最勝王経平安初期点‐八「我が一切の法を暁(サトル)をもちて」
2 隠れているものを推しはかって知る。察知する。感づく。認める。*浄・浦島年代記‐一「皆京者とさとられまいぞ」
3 仏語。迷いを去って真理を体得する。生死の世界を超越した境界に達する。*新古今‐九八五「さとり行くまことの道にいりぬれば」

ふ‐ぎん【諷経】
ふぎん(「きん」は「経」の唐宋音)声を出して経を読むこと。読経。ふうきん。


いたずらごと【徒言】 価値のないことば。無用の言。


たつ【辰】
たつ1 十二支の一つで、その第五番目。しん。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A東から南へ三〇度寄った方角。東南東。B現在の午前八時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。辰の刻。辰の時。C三月の異称。


み【巳】
み1 十二支の一つで、その第六番目。
2 1を年月日・方角・時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A南から東へ三〇度寄った方角。南南東。B現在の午前一〇時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。巳の刻。巳の時。(2)四月の異称。


さんまい【三昧】
さんまい仏語。
1 (梵samDdhi の音訳。三摩提・三摩地とも音訳。定・正定・等持などと訳す)雑念を離れて心を一つの対象に集中した状態をいう。この状態に入るとき、正しい智慧が起こり、対象が正しくとらえられるとする。三枚正受。⇒三昧(ざんまい)。
2 精神を統一、集中することによって得た超能力。*平家‐一〇「肉身に三昧を証じて、慈氏の下生をまつ」
3 物事の奥義を究め、その妙所を得ること。
4 「さんまいば(三昧場)」の略。
━おう‐ざんまい(‥ワウ‥)【三昧王三昧】 (三昧の中の王の意)仏語。最上の三昧。浄土門では念仏を、禅門では坐禅をいう。三昧王。


とき【斎・時】
とき(食すべき時の食の意) 1 僧家で、食事の称。正午以前に食することを法とし、午後に食することを時ならぬ食として、非時(ひじ)という。
2 肉食をとらないこと。精進料理。
3 寺で、檀家や信者に供養のため出す食事。また、法要のときなどに、檀家で、僧・参会者に出す食事。おとき。
4 法要。仏事。
5 節(せち)の日。また、その日の飲食。


き‐しき【規式】
きしき定まった作法。きまり。


うま【午】
うま(平安以降、多く「むま」と表記)
1 十二支の一つで、その第七番目。馬。ご。
2 1を年月日、方角、時刻に配してその呼び名とするもの。@1にあたる年や日。→午の日。A南の方角。B今の午前一二時。また、その前後二時間。一説にその後二時間。午の刻。午の時。


ひつじ【未】
ひつじ1 十二支の一つで、その第八番目。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A南から西へ三〇度寄った方角。南南西。B現在の午後二時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。未の刻。未の時。(2)陰暦六月の異称。


さる【申】
さる1 十二支の一つで、その第九番目。しん。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。「申歳の生まれ」A西から南へ三〇度寄った方角。西南西。B現在の午後四時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。申の時。申の刻。C七月の異称。


むじょう‐じんそく【無常迅速】 (形動)万物の生滅転変の速やかなこと。人の世の移り変わりのきわめて早いこと。人の死の思いがけず早くくること。



とり【酉】
とり1 十二支の一つで、その第一〇番目。ゆう。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A方角の西。B現在の午後六時頃。また、その前後二時間。一説にその後二時間。酉の刻。酉の時。C八月の異称。


ほう‐さん【放参】
ほうさん(ハウ‥)
仏語。
1 (禅宗で、晩の参禅から修行僧を解放すること。後に、晩参を放免する意)晩参を含むすべての行事を休むことをいうようになった。
2 晩に看経(かんきん)すること。禅寺で、夜、経文を黙読すること。


いぬ【戌】
いぬ1 十二支の一つで、その第一一番目。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A西から北へ三〇度寄った方角。西北西。B午後八時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。(2)九月の異称。


い【亥】
い(ゐ)
1 十二支の一つで、その第一二番目。いのしし。がい。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A北から西へ三〇度寄った方角。北北西。B午後一〇時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。C一〇月の異称。


ね【子】
ね1 十二支の一つで、その第一番目。ねずみ。
2 1を年月日・方角・時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。A北の方角。北。B現在の午前零時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。「子の刻」「子の時」C(北斗七星の柄が日没時に子(ね)の方向をさす月の意から)陰暦一一月の異称。《季・冬》


とら【寅】
とら1 十二支の一つで、その第三番目。いん。
2 1を年月日・方角・時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や月や日。寅年・寅の日など。A東から北へ三〇度寄った方角。東北東。B現在の午前四時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。寅の刻。寅の時。C正月の異称。


あん【庵・菴】
あん1 木で作り草で葺(ふ)いた粗末な小家。特に、僧や世捨て人、または、風流人の閑居する小屋。禅宗では、大寺に付属する小僧房。いおり。草庵。庵室。また、小家や料理屋などの名として接尾語的に添えて用いることもある。*正法眼蔵‐行持上「菴にかへる」
2 人の雅号として、接尾語的に添えて用いる。


こう‐こう【耿耿】
こうこう(カウカウ)
〔形動タリ〕
1 光の明るいさま。きらきら光っているさま。*菅家文草‐四「耿々寒灯夜読レ書」
2 心が安らかでないさま。かたく思っていることがあって忘れないさま。また、思っていることがあって、寝られないさま。*新撰万葉‐上「メ賓怨婦両眉低。耿々閨中待二暁鶏一」


ふすま【衾・被】
ふすま長方形の袷(あわせ)で、寝るときにからだの上にかける夜具。綿を入れるのを普通とするが、袖や襟を加えた直垂状のものもある。材料・模様などによって、麻ぶすま、紙ぶすま、まだらぶすま、むしぶすまなどがある。《季・冬》
−の宣旨(せんじ) 主に僧侶の犯罪に関して、罪人を捕らえさせるときに下された宣旨。


うし【丑】
うし1 十二支の一つで、その第二番め。ちゅう。
2 1を年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。@1にあたる年や日。→丑の日。A北から東へ三〇度寄った方角。北北東。B今の午前二時頃。また、その前後各一時間。一説に、その後二時間。C一二月の異称。


ぎょう‐じ【行持】
ぎょうじ(ギャウヂ)
仏道を修行し、いつまでも持続して怠らないこと。


さん‐ぼう【三宝】
さんぼうT 三種の宝の意。
1 仏語。仏と、仏の教えを説いた経典と、その教えをひろめる僧。仏・法・僧。また、仏の教え。仏法。三尊(さんぞん)。
2 仏の異称。


ぜん‐ぢしき【善知識・善智識】
ぜんぢしき(「ぜんちしき」とも)
1 仏語。善法、正法を説いて人を仏道にはいらせる人。外から護る外護、行動を共にする同行、教え導く教導の三種がある。真宗では法主(ほっす)を、禅宗では師僧を尊んでいう。知識。⇔悪知識。
2 人を仏道に導く機縁や機会となるもの。


た‐しょう【多生】
たしょう(‥シャウ)
仏語。
1 何度も生をかえてこの世に生まれかわること。多くの生死を繰り返して輪廻すること。
2 多数を生かすこと。「一殺多生」
3 「たしょう(多生)の縁」の略。
−の縁(えん) 多くの生を経る間に結ばれた因縁。「袖振り合うも多生の縁」
━‐こうごう(‥クヮウゴフ)【多生広劫・多生曠劫】 仏語。長い年月に多くの生死を繰り返して輪廻すること。多生劫。広劫多生。