菊池井手(1)

2000/08/23

 うつけたことに、子供の頃から親しんできた堰や井手が、何の目的で存在するのかを最近まで考えたことがありませんでした。農業に従事している人には笑われるかもしれませんが、もちろんこれは水田を潤すための設備です。いや、この水が確保されて初めて、畑は水田になり、稲を育てることができるようになります。水田を開くということは即ち水を引くこと、井手を掘ることを意味していました。一本の川も多くの井手に別れ、更に細かい小川に分かれて周辺の平野を広く潤しながら流れていることに気づきました。それは、ちょうど、血管が無数に枝分かれして毛細血管となって体を栄養しているような具合です。菊池井手は『菊池氏三代』(吉川弘文館)には「菊池氏時代に開鑿(かいさく)した」とあり、菊池でも最も古い灌漑用水の一つです。


菊池堰

菊池堰

 菊池川、大津へ向かう国道325線の直下にある菊池堰。この堰で菊池井手の水を取り込みます。近くの石碑によると昭和4年頃にここに堰を作ったようです。現在の堰は平成4年8月に改修されたものです。この堰の近くに改修記念などの石碑が何本か建っていますが、最も古い碑文は次のようなものです。(・は判読不能の文字)00/07/28

菊池・・ハ菊池郡ニ於ケル最古最大ノ用水路タリ。其灌漑区域ハ菊池加茂川両村ニ亘リ弐蔓五千三町歩ニ及ブ。徃時ハ菊池川ノ水量豊カナリシモ、近年減水シテ旱魃ノ被害被ルコト少ナカラズ、加エテコノ堰・ノ構造亦・キシテ洪水クル毎ニ流失シ其ノ復・ニ多大ノ夫役ト賦費トヲ・シタリ。此ニ於テ関係者一同相議リ昭和三年十二月菊池・・組合ヲ組織シ堰堤ノ改築、水路ノ浚渫・従来通水ノ障碍アリシ釜場堰ヲ撤去シ其ノ・・・ニ新ニ承水渠専利水ノ経済ヲ旨ト・・昭和四年十二月ソノ筋ノ許可ヲ得直ニ着手シ同・・月竣工セリ其ノ間・害ノ補償纏綿セル経緯ノ調停難解ノ水利問題資金ノ調達等當・者ノ・苦實ヲ察スルニ餘アリ然レドモ至誠一貫・積・ノ・望ヲ達成セリ是實ニ関係者協力一致ノ賜ニシテ将来倍々穀禾豊穣永ニ其ノ・澤ニ浴ス・・・・シ茲ニ記念ノ為ノ碑ヲ建テ後世ニ傳ウ

昭和十一年五月
中原新吾撰
齋藤安治書
 当時の水の重要性、水利権の調整の困難などを思えば、すさまじい程の難事業であったと想像されます。  

取り入れ口と旧水門

取り入れ口 旧水門
 堰の、上流に向かって左側に菊池井手の取り入れ口があります。2000/07/28。
すぐに古い水門がありますが、平成4年の改修ですぐ下に新しい水門が建設され、これは機能していません。眠り姫のお城か、天空の城ラピュタみたいに藪におおわれています。2000/08/10

水門を開閉するためのハンドル

歯車1 歯車2
 ふるい水門を開閉するためのハンドルです。藪におおわれて、使われなくなってからの日々を物語っています。前回に来たときはすっかり葉っぱに隠れてハンドルは見えませんでした。2000/08/20

新水門と菊池井手の旅立ち

新水門 旅立ち
 電動になった新しい水門を通って、菊池井手が深川方面に流れはじめます。2000/07/28



→菊池井手(2)


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